昔の歯並びに返ってしまう〝後戻り〟を防ぐには?

こんにちは。京都・河原町歯科医院のDr.江口です。
今日は「矯正治療後の後戻り」についてのお話しです。


「後戻り(あともどり)」という言葉を聞いたことはありますか?

辞書で調べると

  • 来た道を引き返すこと。逆に戻ること。
  • 良い状態だったり良い方に向かっていた物事が、また悪くなること。

などの解説が出てきます。

歯の矯正治療でもこの意味の通りの「後戻り」が起こります。治療後、きれいになった歯並びが元に戻ってしまうことです。

なぜ後戻りが起こってしまうのでしょうか?

歯は一生「変化」し続けている

歯は生えてきた後、ずっと同じ形で同じ場所にあるわけではありません。
誰の歯も常に少しずつ、形や位置が変化しています。

たとえば、虫歯や歯周病などによって噛み合わせが変わったり、食物を噛むことで上下の歯がすり合っているうちに歯の高さが変わったりします。
歯は奥歯から前歯に向かって力が加わるため、噛み合わせや歯の高さが変わると、それに合わせて位置も少しずつズレていきます。

眠っている間の歯ぎしりや歯の食いしばり癖など、口や舌、あごの動きの習慣も、歯並びに少なからず影響を与えると言われています。

矯正治療で歯を動かすときには、まず歯を支えている骨が溶けて(吸収されて)歯が移動し、動いた場所で新たに骨が形成され、固定化されます。
矯正治療が終了したばかりの歯の根の周囲の骨はまだ弱くて不安定なため、歯は普段よりもずっと動きやすい状態です。
その状態で食事をしたり、以前の習慣のままの口やあごの動きを続けると、歯が後戻りしてしまうのです。

抜歯など、口の中を大きく変化させたケースほど不安定になるので、後戻りのリスクが大きくなります。

後戻りを防ぐ「保定装置(リテーナー)」とその種類

後戻りを防ぐために治療終了後に行うのが、「保定装置(リテーナー)」の装着です。
きれいになった歯並びを安定・維持させるうえで必要不可欠なものです。

しかし実際には、歯を動かす治療が終わった安心感からリテーナーをさぼってしまう方が少なくありません。
後戻りの原因で最も多いのが、リテーナーの装着を怠ったことによるものです。
逆に言えば、きちんとリテーナーを装着していれば、大きな後戻りが起こることはないのです。

リテーナーにはいくつか種類がありますが、大きく分けて「固定式」と取り外しができる「可動式」に分けられます。

固定式は歯の裏側にワイヤーで取り付けるタイプが中心です。
後戻りを防ぐ効果は高いですが、取り外しができないのでメンテナンスをしっかりやる必要があります。
一定期間装着した後は、必要に応じて可動式に換えるケースが多いようです。

可動式は、ワイヤーとプレートで歯を挟むタイプと、透明なマウスピース型タイプがあり、最近はマウスピース型が人気です。
食事や歯磨きのときなど、必要に応じてはずすことができますが、装着をさぼると後戻りを起こします。

リテーナーは歯を移動するものではないので、どちらのタイプも痛みはありません。

当医院では透明なマウスピース型リテーナーを主に使っています。

当院で利用しているマウスピース型リテーナー

歯全体を覆うため歯並びの保持力が強く、透明なので外見を気にしなくてすむのが利点です。
当医院で作成するオリジナルなので、患者さまに合った形に作れる点が好評をいただいています。

リテーナーを続ける「保定期間」

骨がしっかり安定するまでには、最低でも半年〜1年ほどかかります。

リテーナーを続ける必要のある「保定期間」は、矯正治療の内容や患者さまの年齢、医院によって異なりますが、だいたい1〜3年間と言われています。
しかし、「保定期間」が終了してもリテーナーをしなくなると徐々に歯は動いてきます。それは前述のように自然な歯の移動があるからです。そのため当院では、夜間のみ装着するなど、患者様のご都合が許す限り長く行ってくださいと指導させていただいています。

当医院では治療後のフォローアップを2年間としています。
まず半年間、食事以外の時間はリテーナーを装着していただき、半年を過ぎたら夜間のみに移行します。
保定期間中は約3カ月に1回来院いただき、後戻りがないか、虫歯や歯周病になっていないかなどのチェックを行います。
費用は矯正治療費に含まれるシステムなので、保定期間の基本的なメンテナンスは無料です。

最初に書いたように、歯は常に動いて変化をしています。
保定期間は長ければ長いほど効果は高く、長く続けて悪いことは1つもありません。
美しい歯並びや噛み合わせを長く保つ最も効果的な方法は、夜間のリテーナーだけでも一生やり続けることなのです。

ちなみに、リテーナーに使用するマウスピースは、歯ぎしりや食いしばりなどの癖がある方にも有効です。
歯ぎしりや食いしばりは歯周病や歯槽膿漏などの原因になり、歯だけでなくあごなどにも悪い影響を及ぼす可能性があります。
しかしやめようと思っても自分でコントロールできませんし、歯ぎしりは昼間に使った筋肉をリラックスさせる効果もあるため、一概にやめさせればいいというものでもありません。

そういう時、就寝時だけマウスピースを装着すれば、歯やあごへの衝撃を緩和でき、歯を守る効果があるのです。
心当たりのある方は、一度歯科医院に相談してみてはいかがしょう。

矯正後の後戻りを防ぐだけでなく、歯を健康に保つ効果のあるリテーナー。
上手に活用して、美しい歯をできるだけ長くキープしてください。

保定についてはこちらもご覧ください



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