歯ぐきが下がる原因とは?放置するとどうなる?

「最近、歯が長く見える気がする」「歯ぐきが下がってきたかも?」と感じたことはありませんか。
歯ぐきの下がりは、加齢だけが原因と思われがちですが、歯周病や歯みがきの癖、噛み合わせなど、さまざまな要因が関係しています。
初期には自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行してしまうケースも少なくありません。
ここでは、歯ぐきが下がる原因や起こりやすい症状、放置するリスク、治療や予防について分かりやすく解説します。

1. 歯ぐきが下がる状態とは(歯肉退縮)

・歯肉退縮の定義
歯ぐきが下がる状態は、歯科医学的には「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」と呼ばれます。
これは、歯を支えている歯ぐきが徐々に下がり、本来歯ぐきに覆われているはずの歯の根元(歯根)が露出してしまう状態を指します。
年齢に関係なく起こる可能性があり、若い世代でも注意が必要な症状です。

見た目の変化だけでなく起こるトラブル
歯ぐきが下がると、「歯が長くなったように見える」「すき間が目立つ」「老けた印象になる」といった見た目の変化が起こります。
しかし、歯肉退縮の問題は見た目だけにとどまりません。

歯の根元が露出すると、
・冷たいものや甘いものがしみる(知覚過敏)
・歯根部分が虫歯になりやすくなる
・歯周病が進行しやすくなる
・歯の支えが弱くなり、将来的に歯を失うリスクが高まる

といったトラブルが起こりやすくなります。

歯の根はエナメル質に覆われていないため、ダメージを受けやすく、進行すると治療が複雑になるケースも少なくありません。 

自覚しにくい初期症状
歯肉退縮の厄介な点は、初期段階ではほとんど自覚症状がないことです。
痛みや出血がないまま、少しずつ歯ぐきが下がっていくため、「気づいたときにはかなり進行していた」というケースも多く見られます。

初期には、
・歯磨きのときに違和感がある
・歯と歯の間が以前より広く感じる
・歯ブラシが当たる部分が変わった気がする

といった小さな変化がサインになることがあります。

歯ぐきの下がりは自然に元へ戻ることはありません。
早期に気づき、歯科医院で原因を特定し適切な対策を行うことが、進行を防ぐうえで非常に重要です。

2. 歯ぐきが下がる主な原因

歯周病
歯ぐきが下がる原因として最も多いのが歯周病です。
歯周病による炎症が進行すると、歯を支える歯槽骨が少しずつ吸収され、それに伴って歯ぐきも下がっていきます。
痛みが出にくいため、気づかないうちに進行しているケースも少なくありません。

強すぎる歯みがき・誤ったブラッシング
硬い歯ブラシの使用や、力を入れすぎた歯みがきは、歯ぐきを傷つける原因になります。
こうした刺激が続くと歯ぐきが徐々にすり減り、歯の根が露出してしまいます。

噛み合わせ・歯ぎしり・食いしばり
噛み合わせのズレや歯ぎしり・食いしばりがあると、一部の歯に強い力が集中します。
この負担が長期間続くことで、歯を支える骨や歯ぐきにダメージが蓄積され、歯ぐきが下がる原因となります。

矯正治療による影響
矯正治療では歯を動かすため、歯の移動方向と歯槽骨の状態が重要です。
歯槽骨の範囲を超えて歯を動かすと、歯ぐきが下がるリスクが高まります。
そのため、事前の精密な診断と適切な治療計画が欠かせません。

加齢・体質
年齢とともに歯ぐきや歯槽骨は変化し、歯ぐきが下がりやすくなる傾向があります。
また、生まれつき歯ぐきが薄い体質の方は、外部からの刺激に弱く、歯肉退縮が起こりやすいとされています。

喫煙・生活習慣
喫煙は歯ぐきの血流を低下させ、炎症が治りにくくなります。
その結果、歯周病が進行しやすく、歯ぐきが下がるリスクも高まります。
睡眠不足やストレスなどの生活習慣も、歯ぐきの健康に影響を与えます。

3. 歯ぐきが下がった状態を放置するとどうなる?

症状が進行し元に戻りにくくなる
一度下がった歯ぐきは、自然に元の位置へ戻ることはほぼありません。
原因を取り除かない限り、歯肉退縮は少しずつ進行し、改善が難しくなっていきます。

歯を失うリスクが高まる
歯ぐきの下がりが進む背景には、歯周病が関係しているケースが多くあります。
歯周病が進行すると歯槽骨がさらに減少し、最終的に歯を支えきれず、歯を失うリスクが高まります。

治療の選択肢が限られる
早期の段階であれば、原因の改善や経過観察で対応できる場合もあります。
しかし、進行してからでは、外科的処置など治療の選択肢が限られることもあります。
早めに対処することで、負担の少ない治療につながります。

4. 歯ぐきが下がってしまった場合の治療方法

歯ぐきが下がってしまった場合は、まず原因を正確に把握することが大切です。
歯周病や噛み合わせ、歯みがきの癖など、原因によって適切な治療方法は異なります。
状態によっては、進行を抑える治療を中心に行うケースもあります。

・歯周基本治療
歯周病が関係している場合には、歯周基本治療から始めます。
歯石除去や歯の表面の清掃を行い、歯ぐきの炎症を改善することで、これ以上歯ぐきが下がらないようにすることを目的とします。
症状の安定化が、次の治療につながる重要なステップです。

・ブラッシング指導
歯みがきの方法が原因となっている場合は、歯ブラシの種類や力のかけ方、磨き方を丁寧に確認します。
適切なブラッシングを身につけることで、歯ぐきへの負担を減らし、歯肉退縮の進行予防につながります。

マウスピース(ナイトガード)
歯ぎしりや食いしばりがある方には、就寝時に装着するマウスピース(ナイトガード)を使用することがあります。
歯や歯ぐきにかかる強い力を分散し、無意識のダメージを軽減する役割があります。

歯肉移植などの外科的治療(必要な場合)
歯ぐきの下がりが進行している場合には、歯肉移植などの外科的治療が検討されることもあります。
露出した歯の根を歯ぐきで覆い、見た目の改善や知覚過敏の軽減を目指します。
適応や効果には個人差があるため、慎重な診断が重要です。

当院では、歯ぐきが下がった原因を丁寧に見極め、できるだけ負担の少ない治療から段階的にご提案しています。
患者さま一人ひとりのお口の状態に合わせた治療を大切にしています。

予防のためにできること

歯ぐきの下がりを防ぐためには、日々のセルフケアと歯科医院での管理が欠かせません。
やわらかめの歯ブラシを使い、力を入れすぎない正しい歯みがきを心がけることで、歯ぐきへの負担を減らすことができます。

また、定期検診やクリーニングを受けることで、歯周病の早期発見や歯ぐきの状態確認につながります。
あわせて噛み合わせのチェックを行い、歯ぎしりや食いしばりによる負担を減らすことも大切です。

さらに、喫煙や生活リズムの乱れは歯ぐきの回復力を低下させます。
生活習慣を見直すことも、歯ぐきの健康を守るための重要な予防策です。

6. まとめ

歯ぐきの下がり(歯肉退縮)は、早い段階で気づき、原因に応じた対応を行うことが大切です。
放置すると症状が進行し、知覚過敏や虫歯、歯を失うリスクにつながることもあります。
「少し気になる」「以前と違和感がある」と感じた場合は、早めに歯科医院で相談することが、歯ぐきと歯を守る第一歩です。

▽河原町歯科・矯正歯科クリニックの専門医より一言!

これまで多くの患者さまを診てきて感じるのは、歯ぐきの下がりは「ある日突然気づく」ことがとても多い症状だということです。
しかし、いきなり起こることは少なく、徐々に起きていて今始めて気が付いたか、実は元々歯茎が下がっていたという場合も少なくはありません。
特に歯列不正がある場合には歯と歯が引っ付きすぎてその間の歯茎が成長していません。
そのために綺麗な歯並びになったら歯茎が下がって隙間ができたように見えます(これをブラックトライアングルと呼びます)が、実はもともと前述のように歯茎が下がっているのです。
これに対する処置は種々ありますが、その時にお話しします。
また、歯の位置を骨の幅から頬側に出しすぎても歯肉は下がります、必要なら矯正前にCTにて骨の形状を見ておくことも必要です。
診察では、歯ぐきだけを見るのではなく、噛み合わせや歯の動き、歯みがきの仕方など、これまでの生活習慣も含めて丁寧に確認しています。
原因を正しく知ることで、必要以上に不安を感じることなく、その方に合った対策を考えることができます。
「年齢のせいだから仕方ない」と思わず、早い段階でご相談いただくことが、将来ご自身の歯を守る大きな一歩になります。
気になる変化があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

河原町歯科・矯正歯科クリニック

~著者~

院長/矯正担当医(歯学博士)
江口 公人えぐち きみひと

■ 経歴・資格・所属学会等
1988年 徳島大学歯学部卒業
日本顎咬合学会 咬み合わせ認定医
日本口腔インプラント学会会員
インプラント認証医
日本矯正歯科学会
SJCD所属会員
KIRG準会員
歯学博士