顎がカクカク鳴るのは危険?顎関節症の初期症状

「口を開けたときに“カクッ”と音がする」「朝起きたらあごがこわばって動かしにくい」
そんな経験はありませんか?

疲れやストレスのせいだと思って放っておく方も多いですが、そのサインは顎関節症(がくかんせつしょう)の始まりかもしれません。

初期のうちは痛みがなくても、放置すると「口が開かない」「頭痛や肩こりが続く」など、全身の不調へと広がることもあります。今回は、顎関節症の初期症状と見逃さないためのポイントについて、歯科の専門家が詳しく解説します。

1. 顎関節症とは

顎関節症とは、あごの関節やその周囲の筋肉に異常が起きている状態を指します。
具体的には「あごを動かすと音がする」「口が大きく開かない」「噛むと痛い」などの症状が代表的です。
発症は幅広い年代で見られますが、特に10代〜30代の若い世代や女性に多いといわれています。
その背景には、女性は関節や靭帯が比較的やわらかいことや、ホルモンバランスの影響を受けやすいことが関係していると考えられています。

2. こんなサインは要注意!顎関節症の初期症状

顎関節症は、初期の段階では痛みを伴わないことも多く、見過ごされがちです。
しかし、次のようなサインが現れている場合は注意が必要です。

・顎がカクカク鳴る
口を開け閉めしたときに音がするのは、顎の関節でクッションの役割を果たす「関節円板」がズレている可能性があります。

・口の開けにくさ
以前より大きく口を開けられない、スムーズに開かないと感じるのも初期症状のひとつです。

・顎の疲れ・違和感
食事や会話であごを使った後に、重だるさや疲れを感じることがあります。

・朝起きたときの顎のこわばり
就寝中の歯ぎしりや食いしばりが原因で、朝に顎が動かしにくいこともあります。
これらは「まだ軽症」の段階ですが、そのまま放置すると痛みや開口障害が進み、日常生活に支障をきたすことも。
早めに気づき、対策や受診を検討することが大切です。

3. 顎関節症の主な原因

顎関節症は「これだけが原因」というものではなく、複数の要因が重なって起こることが多いとされています。
特に次のような習慣やクセが大きく関係します。

・歯ぎしり・食いしばり
睡眠中の歯ぎしりや、日中の無意識な食いしばりは顎関節に大きな負担をかけます。
自覚がなくても、朝起きたときの顎のこわばりや歯のすり減りがサインになっていることがあります。

・姿勢(猫背・頬杖)
長時間のスマホやパソコン作業で背中が丸くなると、頭の位置が前に出て顎に余計な力がかかります。
また、頬杖のクセも片側の顎関節に強い圧力を与え、左右のバランスを崩す原因になります。

・過度な噛みしめ(スポーツや集中時)
力仕事やスポーツ中、または集中して作業しているときに、無意識に歯を強く噛みしめてしまう人は少なくありません。
この習慣も顎関節や筋肉を疲労させ、症状を引き起こす一因となります。
これらの要因は日常生活の中で気づかないうちに繰り返されることが多いため、「自分には当てはまらない」と思っていても、実は影響を受けているケースが少なくありません。

4. 放置は危険!顎関節症が悪化すると起こること

「音がするだけだから大丈夫」と思って放置してしまう方も少なくありません。
しかし顎関節症は、進行すると次のような問題が起こる可能性があります。

・音だけで済まなくなる
初めはカクカク音だけだったものが、次第に痛みや口の開けにくさ(開口障害)に進行することがあります。

・噛み合わせの悪化や食事のしづらさ
顎の関節や筋肉に負担がかかり続けると、噛み合わせのバランスが崩れ、食事がしにくくなるケースもあります。

・肩こり・頭痛など全身症状に波及
顎まわりの筋肉は首や肩ともつながっているため、慢性的な肩こりや頭痛を引き起こすこともあります。
このように顎関節症は、単なる「あごの音」だけにとどまらず、日常生活や全身の健康に影響する疾患へと進行するリスクがあります。
だからこそ、早い段階でのケアが重要なのです。

5. 自分でできるセルフケア

顎関節症は、初期であれば生活習慣を見直すことで改善や進行の予防につながることがあります。
以下のセルフケアを心がけてみましょう。

・顎に負担をかけない
硬いスルメやフランスパンなど強い力で噛む食品は避け、片側だけで噛むクセも控えましょう。
顎を左右均等に使うことが大切です。

・ストレスをためない・リラックス習慣
精神的な緊張は無意識の食いしばりにつながります。
深呼吸や軽いストレッチ、入浴などでリラックスする時間を作りましょう。

・就寝時の歯ぎしり・食いしばり対策
眠っている間に顎へ強い負担をかけてしまう場合があります。
市販のマウスピースや歯科医院で作製するナイトガードを利用するのも有効です。

これらの工夫で症状の悪化を防ぐことが期待できますが、自己判断で放置せず、症状が続く場合は歯科医院での相談をおすすめします。

6. 歯科で行う顎関節症の治療法とは?

顎関節症は重症化する前であれば、歯科医院での保存的な治療で改善が期待できます。
症状や原因によって方法は異なりますが、主に次のような治療が行われます。

・マウスピース(スプリント療法)
就寝時に透明のマウスピースを装着し、歯ぎしりや食いしばりによって顎にかかる負担を軽減します。
顎関節を休ませることで炎症を抑え、筋肉の緊張も和らげる効果が期待できます。

・噛み合わせの調整
歯の高さや噛み合わせに偏りがあると、顎に不均等な力が加わり症状を悪化させることがあります。
その場合は必要に応じて歯を少し削る、詰め物を調整するなど、バランスを整える治療を行います。

・生活習慣指導
硬い食べ物を避ける、片側ばかりで噛まない、猫背など姿勢を改善する、ストレスをため込まないといった、日常生活でできる工夫を指導します。
セルフケアと合わせて実践することで、再発防止にもつながります。

顎に違和感があると「整形外科に行くべきなのかな?」と迷う方も多いですが、顎関節症は歯科で扱うことが多い疾患です。
まずは歯科医院に相談することで、早い段階で適切な対処ができ、症状の悪化を防ぐことが可能になります。

7.まとめ

「あごがカクカク鳴るだけだから大丈夫」と思って放置してしまう方は少なくありません。
ですが、その小さなサインこそが顎関節症の初期症状であり、放っておくと痛みや開口障害、噛み合わせの悪化、さらには肩こりや頭痛など全身に影響が及ぶ可能性もあります。

初期の段階であれば、セルフケアや歯科での簡単な治療で改善が期待できます。
逆に症状が進行してしまうと、治療に時間がかかり生活への支障も大きくなってしまうことがあります。

「ちょっと気になるな」と感じたら、まずは歯科医院でチェックを受けてみましょう。
早めの相談が悪化を防ぎ、毎日を快適に過ごすための第一歩になります。

▽河原町歯科・矯正歯科クリニックの専門医より一言!

顎関節症は女性を中心に多い歯科疾患です。
主な原因はやはり歯ぎしりです、音がでる歯ぎしり音の出ない食いしばりの二種類があります。
どちらも就寝時に咬合を制御する脳(大脳皮質)が寝ている状態で顎を動かす筋肉の過緊張で起こります。
人間の昼間のストレスの発散部位の一つが口の歯ぎしりらしいので止めることができません。
我々にできることは歯を守るマウスピースをつくることです
(美容外科ではボトックス注射で筋力低下させたりもするようです)。
人間の咬合筋は他の筋肉とは異なっていまして、噛み合わせの高さで最大の筋力を発揮するようになってます。
マウスピースは噛み合わせを上げるので、筋力も最大限発揮されないという効果もあります。
顎がカクカクする場合はまずマウスピース(バイトプレートと言います)をつくりましょう。

河原町歯科・矯正歯科クリニック

~著者~

院長/矯正担当医(歯学博士)
江口 公人えぐち きみひと

■ 経歴・資格・所属学会等
1988年 徳島大学歯学部卒業
日本顎咬合学会 咬み合わせ認定医
日本口腔インプラント学会会員
インプラント認証医
日本矯正歯科学会
SJCD所属会員
KIRG準会員
歯学博士