妊娠中に虫歯が増えるって本当?原因と予防法を歯科医師が解説 2025年7月3日 河原町歯科・矯正歯科クリニック 妊娠中はホルモンバランスの変化や生活習慣の影響で、虫歯や歯周病のリスクが高まる時期です。「つわりで歯磨きがつらい」「甘いものが増えた」「歯ぐきが腫れやすい」そんなお悩みを感じていませんか?この記事では、「妊娠中に虫歯が増えやすい理由」や「妊婦さんでもできる虫歯予防法」などを、歯科医師の視点からわかりやすく解説します。ぜひ最後まで読んで、今できるケアを見つけてみてください。 1. 妊娠中に虫歯が増えるのは本当です 妊娠中は、ホルモンや体の変化によって、虫歯になりやすい状態が自然とつくられてしまいます。主な原因を4つ紹介します。 ① ホルモンバランスの変化(プロゲステロン・エストロゲン)妊娠中は「プロゲステロン」や「エストロゲン」といった女性ホルモンが大きく増加します。これらのホルモンは歯ぐきに影響を与えやすく、歯肉が腫れたり出血しやすくなることがあります。歯肉が腫れると、歯と歯ぐきの間にプラークや細菌がたまりやすくなり、歯周病だけでなく虫歯のリスクも高まります。 ② つわりで歯みがきが不十分になりがちつわりがひどい時期は、歯ブラシを口に入れるのもつらく、歯みがきがおろそかになりがちです。特に奥歯や下の前歯など、磨き残しやすい部分に汚れがたまり、虫歯が進行しやすくなります。 ③ 食生活の変化(間食が増える、酸性食品が増えるなど)妊娠中はホルモンの影響などで空腹を感じやすくなり、自然と間食の回数が増える方が多いです。チョコレートやクッキー、ジュース、酸味の強い果物など、虫歯のリスクを高める食品を摂る機会も多くなりがちです。これらの食品に含まれる糖分や酸は、虫歯菌の栄養源となって酸を発生させ、歯を溶かす原因になります。また、間食の回数が多いと、口の中が酸性の状態になっている時間が長くなり、虫歯が進行しやすくなるため注意が必要です。 ④ 唾液の分泌量が減る or 唾液が酸性に傾く妊娠中はホルモンバランスの変化により、唾液の分泌量が減ったり、唾液の性質が酸性に傾くことがあります。その影響でお口の中が乾きやすくなり、歯の表面を修復する「再石灰化」がうまく働かなくなります。唾液の力が弱まると、虫歯菌が活発になって、虫歯のリスクが高まります。 2. 妊娠中の虫歯を放っておくとどうなる? 「妊娠中は治療できないから…」「出産してから行けばいいかな」と、虫歯を後回しにしてしまう妊婦さんは少なくありません。しかし、虫歯を放置すると、母体だけでなく赤ちゃんにも悪影響を及ぼす可能性があります。 ① 虫歯が悪化しやすい(通院しづらく、後回しになりがち)妊娠中は体調の変化や通院の制限があるため、虫歯ができてもすぐに治療を受けにくいことがあります。そのため、小さな虫歯が進行してしまい、痛みが強くなる・神経まで炎症が進むなど、治療が難しくなるケースも多いです。 ② 歯周病と同時に進行すると、早産・低体重児出産のリスクも歯周病が進行すると、歯ぐきの炎症によってサイトカインやプロスタグランジンといった炎症性物質が増加します。これらの物質は血流に乗って子宮に届き、子宮の収縮を促す働きをしてしまいます。その結果、早産や低体重児のリスクが高まることがあるため、注意が必要です。 ③ 母体の健康悪化が胎児に影響を与える可能性虫歯が原因で強い痛みや発熱を引き起こすと、母体にストレスや体力の消耗をもたらすことがあります。その影響で胎児への栄養や酸素の供給がスムーズに行われなくなる可能性があり、結果として、胎児の発育に影響を及ぼすおそれがあります。 3. 妊娠中でもできる!虫歯の予防法5選 妊娠中は虫歯になりやすい時期ですが、ちょっとした工夫や心がけで、しっかりと予防することができます。ここでは無理のない範囲で取り組める、5つの対策を紹介します。 ①つわり中でもできるやさしい歯みがき法つわりがひどい時は、歯ブラシを口に入れるだけで気分が悪くなることもあるかと思います。そんな時は、以下の工夫をしてみましょう。 ・ヘッドが小さくやわらかい歯ブラシを使う・歯みがき粉は無香料・低刺激のものを選ぶ・体を起こしたまま、前かがみで磨く・どうしても無理なときは、うがいだけでもOK 完璧に磨くことよりも、「できる範囲で続けること」が大切です。 ② キシリトールガムの活用つわり中や外出先など、すぐに歯みがきできない時におすすめなのがキシリトールガム。キシリトールには、虫歯の原因となる菌の働きを抑える効果があります。 ・1日3回、食後に噛むのが効果的・砂糖不使用・100%キシリトールのものを選ぶ ③食後のうがいや水分補給を習慣に食べたあとに水やお茶で軽く口をゆすぐだけでも、食べかすや酸を洗い流す効果があります。甘いものを食べた後は、特に意識してうがいをしましょう。 ・お茶(緑茶・ほうじ茶)には殺菌作用も期待できます・水分補給は唾液の分泌を促し、口内環境の安定にもつながります ④ 歯科医院での妊婦健診(安定期に)妊娠中でも、安定期(妊娠16〜27週ごろ)なら多くの歯科治療が可能です。自治体によっては「妊婦歯科健診」が無料で受けられることもあるので、ぜひ活用しましょう。 ・トラブルが起きる前にチェックしておくのが理想的・歯科医には「妊娠中」であることを必ず伝えてください 4. 妊娠中の歯科治療って安全なの? 「妊娠中に歯の治療をしても大丈夫?」と不安に感じる妊婦さんは多いですが、正しい時期と方法を守れば、基本的に安全に治療を受けられます。 ① レントゲンは防護すれば問題なし歯科用レントゲンは口元を撮影するため、お腹からは離れた位置です。さらに撮影時には鉛の防護エプロンを着用するため、胎児への放射線被ばくは極めて低いです。厚生労働省や日本産科婦人科学会も、「必要な検査であれば、妊娠中でも歯科レントゲンは問題ない」としています。 ② 妊娠中でも使える麻酔薬はある妊娠中でも、歯科治療で使用される局所麻酔薬は一般的に安全とされています。特に、歯科治療でよく使われるリドカインなどの局所麻酔薬は、胎児への影響がほとんどないといわれています。ただし、妊娠初期(特に12週未満)は大切な時期のため、必要がない限り麻酔の使用は控えるのが望ましいとされています。 ③ 安定期(妊娠中期)がもっとも治療に適している妊娠初期(〜15週)はつわりが強く、胎児の器官形成期にあたるため、治療は極力避けるのが一般的です。妊娠中期(16〜27週)になると体調が安定し、治療にも比較的適した時期とされています。緊急性がない場合は、この時期に受診・治療を計画するのが安心です。 ④ 治療の前に必ず「妊娠中」と伝えましょう歯科医院に行く際は、妊娠していることを必ず申告しましょう。妊娠週数や体調を伝えることで、レントゲンや麻酔の使用を適切に判断してもらえます。また、「妊娠中も対応しています」と明記している歯科医院を選ぶと、より安心して治療を受けられます。 5. まとめ:妊娠中は「気づいた時」がケアのチャンスです 妊娠中は、ホルモンバランスや生活習慣の変化によって、虫歯や歯周病になりやすい状態になります。だからこそ、いつも以上にお口のケアを意識することが大切です。つわりがつらい時期は、無理をせず「できる範囲で続けるケア」をおこないましょう。そして、少しでも不安なことがあれば、我慢せずに歯科医院へ相談することをおすめします。お母さんの健康は、赤ちゃんの健康にもつながります。そんな大切な時期だからこそ、お口の健康にも少しだけ目を向けてみてくださいね。 ▽河原町歯科・矯正歯科クリニックの専門医より一言! 妊娠出産は人生の一大事なので、心身ともに健康に過ごしたいものです。上記のような出産や胎児に重大な影響があることもたまにあるとのこと、つわりもあり、体調の悪い時もあったりして、歯みがきがおっくうな時もあると思いますが、是非とも口腔清掃は行いましょう。最近よく言われるのは、新生児のお口にはもともと無菌なので、虫歯菌や歯周病菌はいないのです。実は虫歯菌や歯周病菌の感染はほぼ親からとのことです(祖父、祖母もあるかも)。同じお箸やスプーンなどの食器は子供とはぜひ共有しないようにしてください。 河原町歯科・矯正歯科クリニック ~著者~ 院長/矯正担当医(歯学博士)江口 公人えぐち きみひと ■ 経歴・資格・所属学会等1988年 徳島大学歯学部卒業日本顎咬合学会 咬み合わせ認定医日本口腔インプラント学会会員インプラント認証医日本矯正歯科学会SJCD所属会員KIRG準会員歯学博士