「親知らずは抜いたほうがいいの?」「まだ痛くないけど、このままで大丈夫?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
親知らずは、生え方やお口の環境によって抜歯が必要な場合と、そのままでも問題ない場合があります。
特に、親知らずが原因で痛みや腫れが出る前に、適切な判断をしておくことが大切です。
この記事では、親知らずの基本知識から、抜くべきケース・抜かなくてもよいケース、さらに矯正治療との関係や抜歯時の注意点まで、わかりやすく解説します。
1. 親知らずってどんな歯?基本をおさらい
親知らずは、永久歯の中で最後に生えてくる奥歯です。
正式には「第三大臼歯」と呼ばれ、多くの人にとっては少しやっかいな存在かもしれません。
まずは親知らずの基本的な情報を押さえておきましょう。
① 親知らずの位置と生え方
親知らずは、上あご・下あごの一番奥に左右1本ずつ、最大で4本あります。
通常、前から数えて8番目にあたる歯で、第三大臼歯(だいきゅうし)と分類されます。
ただし、すべての人に4本そろっているわけではなく、もともと1〜2本しかない人や、まったく生えてこない人もいます。
また、生える方向や角度が正常でないケースも多く、トラブルの原因になることがあります。
② 親知らずが生えてくる時期(10代後半〜20代)
親知らずは、一般的に10代後半から20代前半にかけて生えてきます。
ただし、生え方には個人差があり、生え始める年齢が遅い人や、そもそも生えてこない人もいます。
また、歯ぐきの中に完全に埋まっている「埋伏(まいふく)歯」のまま気づかずに過ごす人も多いです。
このような親知らずは、痛みが出たり、隣の歯を押したりすることで、後々トラブルにつながる可能性があります。
2. 親知らずは必ず抜くべきなの?
親知らずは必ず抜くべきというわけではありません。
生え方やお口の状態によって、抜歯が必要な場合と、経過観察で問題ない場合があります。それぞれのケースを見ていきましょう。
① 抜歯がすすめられるケース
以下のような場合は、将来的なトラブルを防ぐためにも、抜歯がすすめられることが多いです。
・斜めや横向きに生えている親知らず
正しい位置に生えていない場合、隣の歯を押してしまったり、歯みがきがしづらくなることで、虫歯や歯周病のリスクが高まることがあります。
・歯ぐきが腫れて痛む(智歯周囲炎)
親知らずの周囲に汚れがたまりやすく、炎症を起こして腫れや痛みが出たり、膿がたまることもあります。
・虫歯や歯周病のリスクが高まる
親知らずは奥にあるため歯ブラシが届きにくく、親知らずだけでなく手前の歯まで虫歯や歯周病になりやすくなる傾向があります。
・噛み合わせに影響することがある
正しく噛み合わなくなることで、顎関節に負担がかかったり、歯並びが乱れる原因になるケースがあります。
・矯正治療の妨げになる場合がある
歯を整えるためのスペースが確保できなかったり、親知らずが歯列の移動を妨げることがあるため、矯正治療前に抜歯を検討することがあります。
② 抜かなくてもよいケース
一方で、以下のような条件を満たしていれば、抜歯せずそのまま残しておいても問題ないケースもあります。
・まっすぐキレイに生えている
親知らずが正常な位置にまっすぐ生えていて、しっかり噛む機能を果たしている場合は、無理に抜歯する必要はありません。
・噛み合わせに問題がない
親知らずが他の歯に悪影響を与えておらず、噛み合わせにも支障がない場合は、そのまま様子を見てもよいと判断されます。
・虫歯や炎症が見られない
歯ぐきの腫れや虫歯などのトラブルがなく、きちんと清掃できている場合には、定期的な経過観察で対応できることもあります。
・将来の移植用として保存する選択も
ほかの歯を失った際に「自家歯牙移植」として利用できる可能性があるため、健康な親知らずはあえて残すことも検討されます。
3. 親知らずと矯正治療の関係
親知らずは矯正治療と密接な関係があります。
特に矯正を始める前に「親知らずは抜いたほうがいいのか?」というご質問をよくいただきます。
矯正治療では、歯を動かすスペースの確保や、正しい噛み合わせの調整が重要です。
親知らずが生えていると、前方の歯を押して歯並びを乱す原因になる場合があります。
そのため、矯正治療の計画段階で親知らずの状態をしっかり確認し、必要に応じて抜歯を検討します。
ただし、すべての親知らずを抜かなければならないわけではありません。
親知らずがまっすぐ生えていて、噛み合わせに悪影響がなく、清掃もしやすい場合は、矯正中もそのまま残すことがあります。
また、抜歯のタイミングは患者様の症状や治療計画によって異なり、矯正前、矯正中、または矯正後に行うケースもあります。
担当医とよく相談し、最適な時期を決めることが大切です。
4. 親知らずを抜くときの注意点
親知らずの抜歯は、他の歯と比べて少し注意が必要なこともあります。
痛みや腫れのリスク、特に下あごの親知らずでは神経との位置関係など、事前に知っておくことで不安を軽減できます。
① 抜歯の痛みや腫れはある?
抜歯時には局所麻酔を使用するため、処置中の痛みはほとんどありません。
処置後は多少の痛みや腫れが出ることがありますが、痛み止めや抗生物質の処方により、多くの場合は数日で落ち着きます。
また、抜歯後の出血はしばらく続くことがありますが、ガーゼで圧迫して止血すれば問題ありません。
血餅(けっぺい:かさぶたのようなもの)が取れてしまうと「ドライソケット」と呼ばれる強い痛みを伴う状態になることがあるので、抜歯後のケアはとても大切です。
② 下の親知らずは注意が必要?
下あごの親知らずは、下歯槽神経(かしそうしんけい)という太い神経に近い場所に生えていることが多いため、神経との距離を正確に把握することが重要です。
当院ではレントゲンやCTを用いて、親知らずと神経の位置関係を正確に把握し、安全な抜歯計画を立てています。
③ 抜歯後の過ごし方(食事・うがい・安静)
親知らずを抜いたあとは、傷口の治癒を促すために以下のようなセルフケアが大切です。
・食事:当日は刺激の少ない柔らかいものを。熱い飲食物は避けましょう。
・うがい:強いうがいはNG。血のかたまりが取れてしまう原因になります。
・安静:激しい運動や長風呂、飲酒は避け、体をしっかり休めてください。
・禁煙:喫煙は血流を悪くし、治りを遅くする原因になります。
適切なケアを行うことで、抜歯後のトラブルは大きく減らすことができます。
何か異常を感じたら、早めに歯科医院へご相談ください。
5. まとめ|親知らずは抜くべきか?迷ったら早めにご相談を
親知らずは、トラブルを起こしやすい歯である一方、状態によっては抜かずに残しておくこともできます。
「痛みがある」「腫れてきた」「まっすぐ生えていないかも…」と気になったら、早めの受診がおすすめです。
また、矯正治療を検討している方にとっても、親知らずの管理はとても重要です。
抜歯のタイミングや必要性は、歯並びやお口全体の状態によって異なるため、自己判断は禁物。
当院では、レントゲンやCTによる精密な検査と丁寧なカウンセリングを行い、お一人おひとりに合わせた最適な治療をご提案いたします。
親知らずが気になる方は、ぜひお気軽にご相談ください。
▽河原町歯科・矯正歯科クリニックの専門医より一言!
親知らずはほぼすべての人に存在してます、私もまだ残っています。
抜歯をするかしないかは歯科医の先生の中でも意見が分かれるとこだと思います。
私の場合は炎症を繰り返す場合と虫歯になってしまっている場合は抜歯を勧めます。
また矯正で親知らずを抜くことで治療の選択肢が増えたり、治療がやりやすくなる場合は抜歯をお願いします。
ただ、前述の顎骨内の神経に大きなリスクが発生する場合や、舌の付け根の組織に損傷等を起こしそうな難しいケースは
ご本人によくリスクを相談し、考えていただくようにしてます。
河原町歯科・矯正歯科クリニック

~著者~
院長/矯正担当医(歯学博士)
江口 公人えぐち きみひと
■ 経歴・資格・所属学会等
1988年 徳島大学歯学部卒業
日本顎咬合学会 咬み合わせ認定医
日本口腔インプラント学会会員
インプラント認証医
日本矯正歯科学会
SJCD所属会員
KIRG準会員
歯学博士