「歯を失ってしまった…」そんなとき、まず検討されるのが「インプラント」「入れ歯」「ブリッジ」の3つです。
それぞれにメリット・デメリットがあり、ライフスタイルやご予算によって最適な治療法は異なります。
このページでは、3つの治療法を徹底比較し、自分に合った選択ができるよう解説していきます。
1. 治療方法について
①インプラントとは?
インプラントは、失った歯の代わりに人工の歯根(インプラント体)をあごの骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。
まず、チタン製のネジのようなインプラント体を外科手術であごの骨に埋め込みます。
埋め込んだあとは骨としっかり結合するまで数ヶ月待ち、その後にアバットメント(連結部分)を取り付け、最後に人工の歯(上部構造)を被せます。
②ブリッジとは?
ブリッジは、失った歯の両隣にある歯を土台として削り、その2本(またはそれ以上)に人工の歯を橋渡しするように固定する治療法です。
③入れ歯とは?
入れ歯は、失った歯を補うための取り外し可能な人工の歯の装置です。
大きく分けて、部分的に歯を失った場合の「部分入れ歯」と、すべての歯を失った場合の「総入れ歯」があります。
部分入れ歯は、残っている歯に金属のバネ(クラスプ)をかけて固定します。
一方、総入れ歯は歯ぐき全体に吸着させる形で装着します。
2. 審美性について
①インプラントの審美性
人工歯はセラミックなどの審美材料で作られ、色・形・透明感を細かく調整できるため、天然歯と見分けがつかないほど自然な仕上がりになります。
また、人工の歯根を骨に埋め込む構造のため、歯ぐきのライン(歯肉ライン)も美しく整えやすく、前歯などの見える部分にも適しています。
ただし、歯ぐきの厚みや骨の状態が審美性に影響するため、治療前に綿密な診断と設計が必要です。
②ブリッジの審美性
ブリッジも、見た目は比較的自然に仕上がる治療法です。
特にセラミックなどの白い材料を使えば、周囲の歯の色や形に合わせることができ、見た目の違和感はほとんどありません。
ただし、構造上「3本以上の歯が一体型になる」ため、歯と歯ぐきの境目が不自然になることがあるほか、時間が経つと歯ぐきがやせて隙間が目立つことがあります。
また、保険適用のブリッジでは金属の材料が使われることが多く、前歯の場合は見た目にやや不向きなケースもあります。
(※保険外でセラミックを選べば審美性は高くなります)
③入れ歯の審美性
入れ歯の見た目は、使う材料や設計によって大きく変わります。
保険適用の部分入れ歯では、金属のバネ(クラスプ)が見えることがあり、前歯にかかると目立ってしまうケースがあります。
総入れ歯の場合も、人工の歯や歯ぐきの色に制限があるため、自然さに欠けることがあります。
一方で、自費診療の「ノンクラスプデンチャー(バネのない入れ歯)」や「審美義歯」などを選ぶことで、金属が見えず、自然で目立たない仕上がりにすることも可能です。
ただし、構造上どうしても「装置感」が出やすいため、完全に自然な見た目を求める場合はやや制限があるといえます。
3. 機能性について
①インプラントの機能性
インプラントは、あごの骨に直接人工歯根を埋め込んで固定するため、天然の歯に最も近い噛む力と安定性が得られます。
・ステーキやせんべいなどの硬いものも問題なく噛めます。
・自分の歯のような感覚で使えます。
・固定式で口の中に余計なパーツがないため、発音や会話にも自然に対応できます。
・噛む刺激があごの骨に伝わりやすく、骨がやせにくいという特徴があります。
ただし、インプラントを長く快適に使うためには、丁寧なセルフケアと定期的なメンテナンスが必須です。
②ブリッジの機能性
ブリッジは、固定式の人工歯なので、基本的には「入れたらそのまま、違和感少なく噛める」という特徴があります。
・日常的な食事には十分対応できます。
・取り外しの必要がなく、感覚的には自分の歯に近いです。
・口の中の形が大きく変わらないため、発音への影響は少ないです。
ただし、両隣の歯が土台になるため、その歯に負担がかかるのと、時間が経つと支えの歯の寿命に影響することもあるため注意が必要です。
また、欠損部の下に隙間ができることがあり、食べ物が詰まりやすくなることもあります。
③入れ歯の機能性
入れ歯は、取り外し式の装置で、装着するとある程度噛むことができますが、インプラントやブリッジに比べると噛む力や安定性に劣る面があります。
・粘り気のあるものや硬い食べ物は噛みにくいことがあります。
・特に下あごの入れ歯は動きやすく、話しているときや食事中にズレを感じる方もいます。
・初めて入れ歯を使う方は、違和感が大きく、発音しにくいこともあります。
・清潔を保つためにメンテナンスは欠かせません。
ただし、複数本の歯を一度に補えるという点では非常に有効で、入れ歯でも工夫次第で快適に使えるようになります。
4. 健康面について
①インプラントの健康面での特徴
インプラントは、周囲の歯を削らず、1本単独で機能する治療法のため、健康な歯にほとんど影響を与えません。
・隣の歯を削らないため、他の歯の寿命を保ちやすいです。
・インプラントに噛む力が伝わることで、骨に適度な刺激が加わり、骨が吸収されにくくなります。
・かみ合わせや歯並びの乱れを防ぎ、将来的なトラブルの予防につながります。
※注意点:手術が必要なため、糖尿病や重度の骨粗しょう症など、全身状態により適応できないケースもあります。
②ブリッジの健康面での特徴
ブリッジは、隣の健康な歯を削って土台にする必要があるため、その歯に一定の負担がかかります。
・健康な歯を大きく削ることで、神経を取るリスクが生じたり、将来的に歯の寿命が短くなる可能性があります。
・噛む力が数本に集中するため、支えきれなくなると土台の歯が割れたり、抜けてしまうことも。
・人工歯と歯ぐきの間に隙間ができると、汚れがたまりやすく、歯周病のリスクが高まります。
定期的なケアが重要で、支えとなる歯の状態を常にチェックしておく必要があります。
③入れ歯の健康面での特徴
入れ歯は、あごの骨や歯ぐきの上に乗せて使う構造のため、装着部位や残っている歯に影響を与えることがあります。
・入れ歯ではあごの骨に直接刺激が伝わらないため、時間とともに骨が吸収され、入れ歯が合わなくなってくることがあります。
・部分入れ歯では、バネで支えている歯が揺さぶられたり、磨耗したりすることがあります。
・長時間使用したり、合わない入れ歯を使い続けると、歯ぐきに炎症や口内炎が起きやすくなることもあります。
・しっかり噛めないことが原因で、消化機能が低下したり、栄養が偏る可能性があります。
ただし、入れ歯は外科的処置を必要とせず、多くの方に対応できる点では体への負担が少ない選択肢です。
5. 寿命・治療期間・費用について
①インプラント
寿命:15年から25年以上使用可能
適切なメンテナンスがあれば、一生使い続けることも可能です。
被せ物(人工歯)は10〜15年ほどで交換が必要になる場合もあります。
治療期間:3〜6か月程度が一般的(※症例によって異なります)
骨の再生や複雑なケースでは1年近くかかることもあります。
費用:【保険適用外・自由診療】
1本あたり 385,000円〜473,000円/本(税込)
※選択される上部構造の素材により異なります。
②ブリッジ
寿命:7〜10年程度
支えている歯(支台歯)の状態が悪化すると、早期にやり直しが必要になることもあります。
治療期間:1〜3週間程度
抜歯を伴う場合は、治癒期間を含めてもう少し延びることがあります。
費用:【保険適用あり/自由診療あり】
保険治療:約 1〜2万円前後(3本分のブリッジの場合)
自費治療(セラミック等):1本あたり8万〜15万円程度
素材や本数によりトータル費用は大きく変動します。
③入れ歯(部分入れ歯・総入れ歯)
寿命:3〜7年程度
あごの骨や歯ぐきが年々変化するため、調整・修理・再製作が必要になることがあります。
治療期間:2〜6週間程度(設計の複雑さにより異なる)
総入れ歯や複雑な部分入れ歯はやや長めになる傾向があります。
費用:【保険適用あり/自由診療あり】
保険治療:5,000〜15,000円程度
自費治療(ノンクラスプ、金属床など):10万〜40万円以上
6. まとめ
インプラント、入れ歯、ブリッジはそれぞれにメリット・デメリットがあり、どれが最適かは患者さまの口腔内の状態やライフスタイル、希望によって異なります。
まずは歯科医院でしっかりと診断を受け、ご自身に合った治療方法を選択することをおすすめします。
▽河原町歯科・矯正歯科クリニックの専門医より一言!
インプラントという治療が世に出てきて、もう60年が経ちます。
その間に色んな種類のインプラントが出てきました、それにより歯科の治療がガラッと変わりました。
今までのブリッジ、入れ歯中心の治療からインプラント中心の治療に移り変わったと思います。
インプラントの良さはそれが歯の代わり以上になるという事です。
無くした歯が元に戻るという技術は人体にとってかけがえのない、人類の歯科の進歩に他ならないので、その技術を享受して頂ければと思います。
ブリッジ、入れ歯は無くした歯を形だけ治す方法ですので、噛み合わせを支える歯の本数は歯が抜けた数だけ減ったままです、女性でも60kg以上の力で噛むと言われています、残った歯にかかる負担は増すばかりですので、徐々に負担過重となり残った歯は減っていきます。
インプラントはしっかり嚙み合わせを支えることで、上記のような負担過重により徐々に歯がダメになっていくことを防ぐ治療法であります。
河原町歯科・矯正歯科クリニック

~著者~
院長/矯正担当医(歯学博士)
江口 公人えぐち きみひと
■ 経歴・資格・所属学会等
1988年 徳島大学歯学部卒業
日本顎咬合学会 咬み合わせ認定医
日本口腔インプラント学会会員
インプラント認証医
日本矯正歯科学会
SJCD所属会員
KIRG準会員
歯学博士