乳歯が抜けるタイミングで歯並びは変わる?永久歯への生え変わりと歯並びの関係を解説

お子さんの乳歯がぐらぐらし始めると、「そろそろ抜けるのかな?」「タイミングが遅いけど大丈夫?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
実は、乳歯が抜ける時期や順番は、将来の歯並びに深く関わっています。
乳歯は単に「一時的な歯」ではなく、永久歯が正しい位置に生えるための“ガイド”のような役割を持っています。
この記事では、乳歯が抜ける時期の目安や、抜けるタイミングが歯並びに与える影響、そして注意したいトラブル例や歯科への相談目安までをわかりやすく解説します。

1. 乳歯の役割と抜ける時期の目安

乳歯は永久歯の生えるスペースを保つ「ガイド役」
乳歯は単なる「一時的な歯」ではなく、永久歯が正しく生えるための大切なガイドの役割を果たしています。
乳歯がしっかりと並び、適切な位置に生えていることで、後から生えてくる永久歯が正しい方向へと導かれます。
また、乳歯は食べ物を噛む・発音を助ける・顎の発育を促すといった重要な働きも担っています。
そのため、乳歯が早く抜けすぎたり、虫歯などで失われたりすると、永久歯の生えるスペースが不足し、歯並びが乱れる原因になることもあります。

一般的な乳歯の生え変わり時期(6〜12歳ごろ)
乳歯の生え変わりは、一般的に6歳ごろから始まり、12歳前後までに永久歯へと置き換わります。
ただし個人差が大きく、半年〜1年ほど早い・遅いことも珍しくありません。
永久歯の生えるスペースを保つためにも、「抜ける時期が極端に早い・遅い」「片側だけ抜けていない」といった場合は、早めに歯科で確認することをおすすめします。

乳歯が抜ける順番の目安

抜ける時期の目安部位左右対称に抜けるのが理想
6〜7歳下の前歯(中切歯)最も早く抜ける
7〜8歳上の前歯(中切歯)下の次に抜ける
8〜9歳上下の側切歯前歯の生え変わりが完了
9〜11歳第一乳臼歯奥歯の生え変わりが始まる
10〜12歳犬歯・第二乳臼歯最後に抜けて生え変わる

※これはあくまで平均的な目安です。
生え変わりが早い・遅いからといってすぐに異常とは限りませんが、極端な差がある場合は歯科医師に相談しましょう。

2. 抜けるタイミングが歯並びに影響する理由

早く抜けるとスペース不足・永久歯のズレの原因に
乳歯が通常より早く抜けてしまうと、永久歯が生える前に周囲の歯がそのスペースへと倒れ込み、永久歯の生える場所が足りなくなることがあります。
この「スペースロス」が起こると、永久歯が正しい位置に生えられず、歯並びの乱れやねじれの原因になることも。
特に、虫歯や外傷などで乳歯を早期に失った場合は、歯科医院で「保隙装置(ほげきそうち)」を使ってスペースを確保するなど、適切な処置を行うことが大切です。
乳歯は「抜けた=終わり」ではなく、永久歯の道しるべとしての役割を果たす時期まで残っていることが重要なのです。

遅いと永久歯が裏側から生えて「二重歯列」になることも
一方で、乳歯がなかなか抜けない場合も注意が必要です。
永久歯の萌出(ほうしゅつ)のタイミングが来ても乳歯が残っていると、永久歯がその裏側や内側から生えてしまい、「二重歯列(にじゅうしれつ)」と呼ばれる状態になることがあります。
このような場合、自然に乳歯が抜けることもありますが、永久歯の位置がずれて歯並びに影響するケースもあるため、早めの診察がおすすめです。
歯科医院ではレントゲンで歯の生え変わりの状態を確認し、必要に応じて乳歯の抜歯や経過観察を行います。

3. よくあるトラブル例

乳歯が残ったまま永久歯が生えてきた
乳歯の根の吸収が遅いと、永久歯が裏側や内側から生えてきて、歯が二重に並ぶ「二重歯列」になることがあります。
特に下の前歯でよく見られます。
自然に抜けることもありますが、永久歯の位置がずれる前に歯科医院で確認しましょう。

永久歯が斜め・内側に生えてきた
生えるスペースが足りなかったり、乳歯が早く抜けすぎると、永久歯が斜めや内側にずれて生えることがあります。
放っておくと噛み合わせが悪くなる場合もあるため、早めのチェックがおすすめです。

乳歯が抜けたのに永久歯がなかなか出てこない
乳歯が抜けてから1〜2か月経っても永久歯が見えてこない場合、向きがずれていたり、スペースが足りない可能性があります。
多くは自然に生えますが、歯科でレントゲンを撮ると安心です。

4. こんな場合は歯科医院へ相談を

乳歯の生え変わりには個人差がありますが、次のようなケースでは早めの歯科受診がおすすめです。
成長段階を見極めて適切に対処することで、将来の歯並びトラブルを防ぐことができます。

チェックリスト
☐ 抜ける順番が左右で違う
☐ 片側だけ乳歯が残っている
☐ 永久歯が内側や外側など、ずれて生えている
☐ 6歳を過ぎても前歯がぐらつかない
☐ 乳歯が抜けたのに、しばらく経っても永久歯が生えてこない

1つでも当てはまる場合は、早めに歯科医院で確認するのがおすすめです。
成長のペースに合わせて対応することで、将来の歯並びトラブルを防ぐことができます。

5. 歯並びを整えるためにできること

乳歯のケアと噛む力を育てる食習慣
乳歯の時期からしっかり噛むことは、あごの発達や歯並びに大きく関係します。
やわらかいものばかりでなく、少し噛みごたえのある食材を取り入れ、「よく噛む習慣」を育てましょう。
また、乳歯のむし歯は永久歯の位置にも影響するため、毎日の歯みがきと定期検診が大切です。

指しゃぶり・口呼吸・頬杖などのクセに注意
指しゃぶりや口呼吸、頬杖などのクセは、歯やあごに不自然な力を加え、出っ歯・受け口・開咬(前歯が閉じない)などの原因になることがあります。
3歳を過ぎても続く場合は、早めに歯科で相談することがおすすめです。

小児矯正(Ⅰ期治療)のタイミングとメリット
小児矯正(Ⅰ期治療)は、あごの成長をコントロールしながら、歯がきれいに並ぶ土台を整える治療です。
乳歯と永久歯が混ざっている「6〜10歳ごろ」に始めることで、自然な成長力を活かしながら、将来の本格矯正(Ⅱ期治療)を軽くできる可能性があります。

たとえば、
・永久歯がきれいに生えるスペースを確保できる
・あごのズレや噛み合わせの歪みを早期に改善できる
・将来的に抜歯や長期間の装置治療を避けられる場合がある

といったメリットがあります。

また、見た目の改善だけでなく、しっかり噛む力・正しい発音・鼻呼吸の習慣など、全身の健やかな発育にもつながります。

「少し歯が重なってきた」「噛み合わせが気になる」など、気になるサインが見られたら、ぜひ一度ご相談ください。
お子さま一人ひとりの成長段階に合わせた、最適な治療時期と方法をご提案いたします。

6. まとめ:乳歯の時期こそ歯並びの土台を整えるチャンス

乳歯の生え変わりは、永久歯がきれいに並ぶための大切な準備期間です。
この時期に乳歯を大切にし、よく噛む・悪いクセを防ぐ・定期的に歯を見守ることで、将来の歯並びがぐんと整いやすくなります。

「抜ける時期が左右で違う」「永久歯の位置が気になる」など、少しでも不安を感じたら、早めに歯科医院へご相談ください。

お子さんの健やかな歯の成長を、家庭と歯科医院で一緒に見守っていきましょう。

▽河原町歯科・矯正歯科クリニックの専門医より一言!

乳歯が抜けて永久歯に生え変わる時期は、まさにお子さんの成長を感じるタイミングですね。
「なかなか抜けないけど大丈夫かな?」「もう抜けたのに歯が出てこない…」など、心配になる保護者の方も多いと思います。

乳歯は単なる“仮の歯”ではなく、後から生えてくる永久歯の位置を導く大切な役割があります。
虫歯で早く抜けてしまったり、逆に抜けずに二重に生えてきたりすると、永久歯の並び方や噛み合わせに影響が出ることもあります。

顎が小さいと歯は並びません、昔は永久歯が生えるまで待ってから抜歯をして矯正治療を開始しましょうというのが主でした。
しかしそれでは狭い顎の中で歯を並べるので舌房が狭くなるなどの弊害が出ます。
最近では、成長をしている小児の時期に顎を拡げ、舌房を狭くすることなくできれば抜歯をせずに終わらせる治療を目指しています。
気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
レントゲンで確認すれば、永久歯の位置や生え方の状態がしっかりわかり、顎骨の中で生えるまえからガタガタになっているお子さんも多く見受けられます。

乳歯の時期からしっかりケアしておくことが、将来のきれいな歯並びにつながります。
お子さんの成長を見守りながら、一緒に健やかな口の発育をサポートしていきましょう。

河原町歯科・矯正歯科クリニック

~著者~

院長/矯正担当医(歯学博士)
江口 公人えぐち きみひと

■ 経歴・資格・所属学会等
1988年 徳島大学歯学部卒業
日本顎咬合学会 咬み合わせ認定医
日本口腔インプラント学会会員
インプラント認証医
日本矯正歯科学会
SJCD所属会員
KIRG準会員
歯学博士